らくてん会

らくてん会は西成寄席のお世話とアマチュア落語・演芸のサークルです。

2.二番煎じ(ツッコミ)

2.二番煎じ(ツッコミ)

【あらまし】

江戸時代、各町には火の用心のための「番小屋」があって、夜回りをするために夜な夜な町内の者が集まって来ます。もとより飲酒は禁止されているのですが、寒さが厳しい夜のこと、こっそりお酒を持ち込んだ者がおります。火鉢で燗をして皆で飲むんですが、冷え切ったからだ、美味しくないはずがございません。何だかんだと盛り上がっておりますところに、見回りの役人がやってくる。とっさに「風邪の煎じ薬でございます」と見え透いた嘘をつくと、心得た役人が「味見をする」と言い出す。恐々差し出された「風邪薬」を飲み干したお役人、「なかなか良き風邪薬である」とお替りを所望しますが、お酒はもうおしまい。そこで「拙者町内を一回りしてまいる間に、二番煎じを出しておけ」。                    (南坊)

<参照:全編内容は「特選上方落語覚書」(http://homepage3.nifty.com/rakugo/kamigata/index1.htm)など>

【展示室】

こっそりと酒が持ち込まれたのを知ったこれも酒好きの世話役。困った顔をしつつも、もうたまりまへん。おのれが飲みたい下ごころ丸出しに、「え~え燗の道具がおまんねん。ここの番人の市助、今日は休み取ってもろてますけど、あれがまた好きでっしゃろ。ツッコミちゅうてええの持ってまんねん。ちょっと待っとおくなはれや。万さん。ああ、ちょっと立ってもらえまっか。すんまへん。立ったついでに、物取ってもらえまっしゃろか。えらいすんまへん。その棚の上にね、ツッコミがおまんねん。あの、土でこしらえた、先のとんがった、そうそうそう、鳩みたいな恰好した、それそれそれ。」

この「ツッコミ」を、四万十川への旅行の途中、高知市内で買いました(平成27年7月12日)。写真の品。商品名は「ハトかん2号」(300cc 210mm×75mm×h110mm)。落語にあるとおり火鉢や囲炉裏の灰の中に突っ込んで酒の燗をする道具です。本品の場合、釉薬が塗られていない部分を灰の中へいれて遠赤外線でじっくり温めるとまろやかな味のお燗ができあがるとのこと。以前にネットで調べて目をつけていたお店(植野陶器店)に、たまたまの旅行の途上に立ち寄ってゲット。消費税別で900円。産地は岐阜県の多治見(美濃焼)ということですが、扱う商店は少なく(そらそやわなあ)、北海道あたりからも注文が来るそうです。

ハトかん購入1  ハトかん購入2

一般的な名称としては、「はとかん(鳩燗)」のほか「鳩徳利」「鳩ジョカ」「鳩燗器」などが使われ、ネットで検索したところでは「鳩徳利」をキーワードとした場合が一番多くヒットします(「鴨徳利」というのもありますが、灰の中に突っ込んで酒を燗する形状でないものも多く、これは一応別ものとして区別しておくべきでしょう)。名前の由来は、見てのとおりその形状が鳩に似ているから。もっとも、尿瓶にも似ています。買ったお店のホームページにも「けっして尿瓶ではないんですよ」と書かれているくらいで・・・けど、入口の直径約4.5cm、容量300ccなら、1回分としては使える・・・かな? うん?女のヒトは・・・どう? ああ「じょうごをそえて」!?

月桂冠・鳩徳利
▲鳩徳利(鳩燗徳利)
備前焼。江戸時代後期のもの。
容量290ml、17cm×7.5cm×H7.5cm。
(月桂冠大倉記念館蔵)

酒の資料館
▲鴨徳利(左)鳩かん(右)
(黒澤酒造 酒の資料館蔵)

酒器処藤山
▲鳩燗器(創作酒器処 藤山HP より)

もともと炉端に差して燗をつけた「日向ちろり*」の変形したものとのこと(「焼酎の事典」菅間誠之助著/三省堂1985年より)(*宮崎地方で使われ、素焼きや錫製 Wikipedia)。「ツッコミ」は大阪中心の呼称でしょうか。大坂ミナミの金工師さんよる銀製鳩徳利の箱書きに「鳩突込」とあります(Gooブログ「骨董屋の独り言」より)。
家庭から火鉢や囲炉裏が姿を消した今日では、主に居酒屋さんなどで営業用に使われている場合が多いのではと思います。

食べログ囲炉茶屋1  食べログ囲炉茶屋2
▲食べログ「囲炉茶屋」(
静岡県熱海市)より

食べログ柳屋
▲食べログ「Yanagiya(柳屋)」(岐阜県瑞浪市)より

「ええ、これがツッコミちいましてね、これをね、火鉢の火の横手の灰のとこへ、ぐ~っとぐっとこう押し込んどきまんねん、ええ。しばらくしたらね、パチッて音しまんねん。燗ができたん知らしよりまんねん。昔の道具、よう出来てまっせ、これ上燗になりまんねん」。

かねてこの「パチッ」という音がどのような仕掛けでするものなのか、不思議に思っていました。プロの落語家さんに訊ねますと、「何か温度の変化に反応するものが別についていたのでは」とか「素焼きの粗末なものは温度で歪んで細かなひび割れでもしてそんな音がしたのだろう」とかお答えはさまざま。どなたも想像でおっしゃられるのみです。月亭文都師のブログには「推測するに炭がいこってパチパチ鳴る=そのころには燗ができている」という説が載っていました(BUNTO WORLD RAKUTEN「ツッコミ」考(2))。今回購入に際しお店の方に尋ねてみましたが、「燗ができたらパチっと音がする」というのは聞いたことがないとのこと。まあ、故・桂米朝師匠も「知らん」とおっしゃっていたとのこと(同)。これ以上の探求は、件のツッコミ=ハトかんで一杯やってからにします。でんでん。

(参考サイト)
・植野陶器店HP     http://www.uenotoukiten.com/zakki/zk2/zk2-s4.html
・月桂冠株式会社HP http://www.gekkeikan.co.jp/enjoy/culture/winter/winter03.html
・黒澤酒造株式会社HP http://www.kurosawa.biz/landscape/shiryoukan.html
・ひるね蔵酒亭HP   http://www.kt.rim.or.jp/~wadada/cyokayume/yamabknigo141012.html
・創作酒器処藤山HP  http://touzan.ocnk.net/product/9
・食べログ「囲炉茶」  http://tabelog.com/shizuoka/A2205/A220502/22003032/dtlrvwlst/5332414/
・食べログ「Yanahiya(柳屋)」     http://tabelog.com/en/gifu/A2103/A210301/21000023/dtlphotolst/1/11/?smp=l
・Gooブログ「骨董屋の独り言」http://blog.goo.ne.jp/sauceyakisoba/e/c8982697a57977384942183c0f8c9963
・楽天BLOG「BUNTO WORLD RAKUTEN」  http://plaza.rakuten.co.jp/hatten/diary/200506270000/

<後記:私の「二番煎じ」を聴かれた二十歳代の女性から噺の半分くらいしか分からなかったと言われショックだったことがあります。平成生まれの皆さんには、「ひのようじん」や「ひばち」「せんじる」などですら説明が要るのかも知れません。とりあえずは、昭和24年生まれの私自身にも具体のイメージ・実感がなかった「ツッコミ」を取り上げました。当面ご容赦を。>

(担当:水車)

 

 

 

 

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